或るトポロジストの回想

小さなコトを大きくカク

中欧旅行記〜プラハ 1

フランクフルト空港でのトランスファーは、まるで迷路のようだった。

 

羽田を発ってからまる12時間。

久しぶりの長時間フライトということもあり、僕は既にお疲れモードであった。

 

慣れない一人旅で次に待ち構えるのはトランスファー、それもあのフランクフルト空港である。

この空港は乗り換えが非常に困難ということで知られる空港である。

何が困難かというと、ルート案内がわかりづらい。わかりづらい、というか見つけづらいのだ。ぼけーっとしながら他のお客様の流れに合わせていると、自分が進むべきコースを見過ごしてしまう可能性がある。

 

しかも怖いのは、一度ルートを外れると二度と戻ってこれないという初心者殺しの仕様になっているのだ*1

 

そして何を隠そうこの僕は初心者であった

 

飛行機を降りると、掲示板に出された乗り換え先の搭乗ゲートを確認。何度も確認。おまけに写真もとった。

 

入国手続きから手荷物検査に身体チェック、これらを一通り終えて次の便へGO

 

ルフトハンザの飛行機が連絡通路のガラス越しに見えてきた。

搭乗ゲートにつき、頭上の掲示板には「プラハ行き」の文字が。これで僕は一安心した。

 

無事に機内へと案内される。

プラハはやはり人気なのか、機内の顔ぶれは観光客がおおい。そして満席に近い状態であった。

羽田からのフランクフルト便はガラガラであったので、僕は少し窮屈に感じた。

 

窓側の席を取っていたのでちょっとすみませんと外国人のおじさんに退いてもらって窓側席に滑り込んだ。そのおじさんとはその後は一度も口を聞かなかった。*2

 

ディレイののちに飛行機は出発。フランクフルトでの滞在時間はわずか45分であった(これもトランスファーに僕が恐怖していた理由!)

 

フランクフルトからチェコプラハまで、所要時間は3時間ほどである。夕刻に飛び立った眼下の大地も、見ればもうすっかり影を落としている。街の明かりはまばらである。

 

しばくすると、褶曲した大きな川筋が見えてきた。

蛇のような曲がり具合もさることながら、その河岸の侵食も激しい。岸というよりもはや崖というに相応しかった。

 

「これが、ヴルタヴァ・ベンド*3」と僕はポツリ呟いた。

 

そうすると…と思いながら視線を南へと移す。ヴルタヴァ・ベンドの南方に、宝石のように輝いた街明かりが見えていた。

そう、これが中欧の華、プラハである。

大地が闇夜に包まれていく中、町全体が優しいオレンジ色のライトに包まれ、一つ一つの建物が繊細な飴細工のように散りばめられている。

曲がりくねったヴルタヴァ川はその光に導かれるようにして、細く黒い体を街の方へと伸ばしていた。

 

僕らの飛行機も、その光に吸い込まれるようにプラハ へと機体を傾けた。

 

 

初めまして、プラハ

そして、中欧

 

 

 

僕の小さな中欧旅行の始まりであった。

 

*1:全部が全部戻れないというわけではないが、最悪の場合出発ロビーから出てしまう!など凶悪

*2:別におじさんとは喧嘩してはいない。念のために

*3:ドナウベンドをもじった表現。

ヴルタヴァ川 - Wikipedia