コロナ対応のこれから①
前回まではコロナ対応のこれまでと称して独断の振り返りを行った
ここでは、コロナ対応に係る今後の方向性について考えてみる
コロナ対応のこれからと一口に述べても、大小のスケールで語るべき話題は大量にある。それは、今回の問題が社会に与えた大きさと広さを考えれば当然のことといえる。
木を見て森を見ずという言葉にあるように、局所的な話題に終始しても全体像を捉えることはできないから、まずは今回のコロナ禍のフレームワークを捉え、そこから細部の話へとつなげていくのがわかり良いかと思う。
ということで、まずは全社会的な問題について考えていきたい。スローガン的に言えば、『これから日本社会はどのような戦略をとっていくべきなのか』ということである。
緊急事態宣言後の日本社会の方向性
全体像を捉えるとはいったものの、前の記事を書いてから少し間が空いてしまった。その間にいくつか重要なニュースがあったので、ここに至るまでの直近の話題について少し振り返っておきたい。
緊急事態宣言が全国に出されたのち、外出自粛の効果が出てきたのか、5月の第二週あたりから新規の感染者数が明確に減少し始めた。
大型連休の効果が出ると思われた5月の第三週からは、全国的にほとんど感染者が出なくなった。ある程度の発見が続いていたのは、北海道、一都三県及び大阪周辺の府県である。
そして5/24現在、緊急事態宣言が続いているのは北海道及び一都三県のみとなった。しかしこの二つの生活圏では依然として新規感染者が二桁のレベルで出ているため、宣言の解除に踏み切れないでいる。「25日にも宣言解除を」と諮問委員会の開催の話が上がっているが、果たして。
ともあれ、ここまでの流れで感染症の第一波が収束したと考えて良いだろう、と個人的には思っている(報道及び世論も概ねそのように見受けられる)。
今後の感染状況
今回の感染症で問題となっている点というのは、
- 潜伏期間が長く、無自覚のうちに他者感染が発生する
- 重症にいたるまでの期間が短い
- 有効なワクチンがまだ開発されていない
この三つに集約されると思う。そして、これらを根本原因として様々な社会問題が誘発されていると考えられる。
具体的なリスクは後述することにしよう。ここでは、世界がこの感染症に対してどのようなスタンスで対応していくのかという点に着目してみる。
ワイドショーなどでも既に述べられていることではあるが、この感染症との戦いは「長期戦」になることは間違いない。
なぜなら、今回の感染症は「自然経過による集団免疫の獲得」というシナリオを取れないからだ。この世で発生する新規感染症の終息というのは、ごくわずかな例外を除いて「人類との共存(=集団免疫の獲得)」という道以外にはない。*1
したがって、早期に自然免疫が獲得ができない、それすなわち長期戦ということになる。
なぜ早期獲得ができないのか?
これは第一波の状況を見れば理解してもらえるであろう。
今回の第一波でこの感染症が我々に印象付けたイメージというのは、「感染は一瞬で拡大する」「医療機関は爆発した感染者数をケアしきれない」などであろう。これは上に述べた特徴のうち1、2からくるものである。
対比としてインフルエンザをあげるが、これは感染力という点から見ればcovid-19のそれと大差ないであろう。問題はやはり、潜伏期間が長いことと、重症化した患者の死亡リスクが比較的に大きいということだ。気づかぬうちに人から人への感染が広まり、ある時になり感染者が急増する。この急増は病床数の逼迫を誘発し、体の弱いお年寄りや基礎疾患を抱える人間が発症しても、受け入れる余裕がないという事態を招きかねない。
(なぜ重症化するのか?という点は難しいが、一方でインフルエンザの場合は毎年流行していてウイルスの型が似ていること、そしてワクチンなどの対策が既に存在することを背景に重症化が抑えられていると考えられる。)
十分な医療体制が整っておらず、感染による死亡リスクも少なくないことから、このウイルスを野放しにして集団免疫を獲得させようとするのは無理があるのだ。
少し長くなったが、以上を踏まえると波型のような状況が続くと思われる。
- 大規模感染の収束とそれによる経済活動の再開
- 大規模感染の再発生とそれによる経済活動の再停止
- 感染勢力の減衰(1に戻る)
問題なのは、この第二波以降の感染規模の程度がどれくらいになるか、ということである。
非常に深刻な感染状況に陥った欧米諸国だが、これでも国内感染者の割合というのは数%から数十%であり、集団免疫の獲得には程遠い数値である。言うなれば、「感染者はまだまだマイノリティー」である。
したがって、この第二波以降も、今回のような感染規模になるどころか、それを遥かに上回る超大規模感染になる可能性は大いにある。
感染が波型になるといってもその規模がどれくらいになるのか、それは上ブレのリスクもまだまだ大きいということを念頭に置かなければならない。
日本のリスク
上のセクションで振り返ったことから、長期戦となることを見据えた対策を取らねばならないということは明白であろう。
それでは、今後の日本がケアしなくてはならない問題点と危険点はどこにあるだろうか。ここではそれを大まかに見てみたい。
直近の問題
まず今回の第一波が与えた打撃により見えてきた、現社会システムの脆弱性を捉えた問題点に ついて考えてみる。
医療体制の拡充
前記事でも触れたが、社会打撃の二大問題のうち、一つは人命の確保が困難になることである。もっと言えば、それは以下のような医療体制の改善という点に還元される。
医療資源の確保
これは医療用マスクやECMOといった直接の資源のほか、高度な医療を行う医師などの医療関係者の健康維持も含まれる。また、第一波は持ち堪えたが、PCR検査の規模についてはもっと拡張するための準備が必要である。
患者の管理体制の問題
軽症の患者は自宅待機を余儀なくされた。さらに、中等症患者でも搬送先の病院が決まらないという問題があった。電話相談から診療、そして入院と治療という一連の流れがスムーズに行える体制を整えねばならない。これは以下のようにいくつかの問題に分割される。
医療施設とコロナ専用病床の全国配備(超大規模感染の備え)、保健所の相談体制の充実(人手不足である)、搬送体制の充実、在宅患者のフォロー体制の構築
特に、医療施設の拡充が都市と地方を問わずに早急に解決しなければいけない優先課題であると考える。
経済支援
二大問題のもう一方は経済打撃である。たった数ヶ月の経済停止により破産にまで追い込まれる企業が続出したことは、深刻な問題として捉えねばならない。
給付金の迅速支給
これは、連日ニュースで流れていた通りである。特に支援を必要とするとされていたのは以下。
休業・失業などで収入が落ち込んだ経営者や労働者、アルバイト収入が減少した学生、外国人労働者、生活保護の受けているなどの貧困層
(4月の時点で「来月には貯蓄が底をつく」などの声があったことからも、個人レベルでは迅速な支給が求められている。)
もう一方は、経済を回す大役を担う企業の支援である。航空産業、飲食業、アパレル、芸術など、今回の「不要不急の自粛」による影響を受けた企業への「継続的な」支援は絶やしてはいけない。コロナ対策が長期戦となることからもこれらは明らかであろう。
前も述べたが、給付は自治体任せではなくマイナンバーカードなどを活用したスピーディなものへと変換する必要がある。給付体制に関しては、その構造を見直したり、人員を拡充するなどの改善をまだまだやらねばならないと考えている。
迅速な対応が必要な分野は(大まかには)以上である。ただ、これから経済と感染リスクとを天秤にかけながら全社会的な対応が求められるため、日本社会には今までにないタイプの経済活動スタイルが必要となってくる。
意外と長くなってしまったので今回はここで終わりにして、次からは上述した中長期的な観点からのコロナ対策について考えてみたい。キーポイントは「バランス重視」ということになってくるだろう。