中欧旅行記〜プラハ2
プラハ空港の到着ロビーを出ると、僕はまずATMを探しにとりかかった。
チェコはユーロを導入していないため、1ユーロも使えない。この国の通貨はチェココルナだ。1ユーロ120円位に対して、1チェココルナはなんと4.5円。まぁ大体、日本円の額面を5倍くらいするとチェココルナ。
フランスとかドイツとかは過去にも旅行したことがあるが、チェコをはじめとした中東欧を旅行したことはない。これが初めてだ。なので1チェココルナも持ち合わせていなかった。*1
ATMはすぐに見つかった。空港内なので若干の手数料には目をつぶろう。
最近?はクレジットカード一つで引き出しができるのでATMも頼もしい。英語の説明も流石に付いていたので一安心(チェコ語でこられたら多分無理)
一発目だったのでvisaクレジットカードがちゃんと読み込まれるかどうかヒヤヒヤだったが、ATMは無事に認識してくれた。予定通りの金額(けっこう多額)を引き出せた。
さて次は移動である。
空港からプラハ市内はかなり離れている。移動手段はバスと電車の組み合わせorタクシーである。*2
タクシーは電話予約どうのこうのが怖かったのでバスと電車(地下鉄)の組み合わせにした。
Suicaとかはなく、切符販売機もあまりないので(!)、窓口で切符を買わねばならない。
窓口のお姉さんに32コルナねと言われたが、引き出したのは大きな紙幣ばかりで小銭はない。大丈夫だろうと思って200コルナ紙幣を出したが「そんな大きいのはダメ」といって突っぱねられてしまった。これには困った。
仕方なく近くの売店でパンとコーヒーを買い(店員が駄弁っていてサービスが遅い)、小銭を入手。これでなんとか切符も買えた。
治安の問題から、もともと海外では大きなキャッシュを持ち歩かないらしい。また、レジにも大金は入れないとのことだ。これには一理あるのだが、現金払いに慣れた日本人としては少し融通が効かないと不満に思ってしまう。
切符売り場の店員さんの「ダメダメ。小銭を用意しな」という一方的な態度もあまり好ましくは感じられなかった。
でもまぁ、逆の立場で考えてみたら、世間知らずな外人の小僧が大人相手に万札を安っぽく扱って「そのガム買いたいんだけど、いくら?」みたいに言ってきたら自分もむかつくんだろうなと思った。
相手文化との違いは心に留めておかないといけないなと思ってしまった。そして、郷に入っては郷に従え、ということだ。
さて、切符を自動改札(目立たない)に挿して日時を刻印する。これでバスに乗っていて車掌さん(?)の検札が入っても罰金が取られることはない。トランクを右手に、やたらでかいパンの袋を左脇に挟みながらバスに乗車。地元の人だろうか、好奇の目に晒されて居心地が少し悪く感じながらも、着席してバスに揺られた。
しばらくして地下鉄駅に到着。どこから地下鉄に行けるのか良くわからないので他の乗客についていく。
長いエスカレーターでボケーっと突っ立っていると、背負っていたカバンに妙な揺れを感じた。
あれ?と思って振り返ると、怪しげな表情のおじさんが僕のカバンに手をかけていた。
スリだっっ!!!
僕は慌てて鞄を前に抱えると、おっさんをひと睨みして足早に逃げた。カバンの中の防犯対策は一通り施していたこともあり、幸いにも被害に遭わずに済んだ。
プラハは中欧屈指の観光スポットで、アジア圏からの人気が高い。自分のようないかにもな人間は狙われやすいのだろう。なんか舐められたようで悔しかったが、やっぱ気を引き締めないとなと思いを新たにした。
そんなこんなで、地下鉄に乗っている間は完璧なポジショニングで周囲を警戒した。この時の僕の表情はきっと恐ろしかったに違いない。
旧ユダヤ墓地に近いStaroměstská駅で下車すると、今度は長いエスカレーターを登り切ってプラハの街へと躍り出た。
「寒い」
が第一印象であった。3月といえば日本でもまだまだ冷え込む季節である。ユーラシア大陸の内陸寄りであれば尚更だ。肺に凍てつく冷気が入り込んだ。
それと同時に素直に綺麗だという印象を受けた。フライトから見えたプラハのオレンジ色の街頭が、街のそこここをボーッと照らし町全体を優しく包んでいた。街角の闇と路上の明るさが僕を誘惑した。
「プラハだ!」
思わず嬉しくなった僕は、宿泊先とは真逆の方向に駆け出した。行先はヴルタヴァ川だ。
Mánesův most橋の欄干にもたれかかり、真下に流れる真っ暗なヴルタヴァ川とそこに映り込むプラハの夜景とを静かに見つめた。
フーっと吐息すると、空港を出てからのゴタゴタは全てどうでも良くなり、穏やかな気持ちに包まれていた。